

「去年、ライヴDVDの音を編集してる時、その音を聴いてたら、すごく良かったから、NAOKIと“音だけで楽しめるライヴ・アルバムを出したいね”っていう話をしてたのね。最初のきっかけはそういう単純な理由だよね。でもね、DVDにしろ、ライヴ・アルバムにしろ、そういうライヴ作品を出したいと思ったのは、今のメンバーになったことが大きいよ。このメンバーになったからこそ、武道館をやりたいと思ったし、それを作品として残したいと思ったの」(KUMI) そんな風にインタビューの冒頭で切り出された僕の目の前には一枚のアルバムがある。タイトルは『LIVE PSYCHEDELICO』。その制作動機と内容がタイトル同様に、極めて明快なライヴ・アルバムがここに完成した。「今の時期じゃないと出来ないことをいつもやっていたいっていうのが大前提にあるんだけど、1st、2nd、3rdとあって、そういう中で出会った仲間がいて、ツアーがあって、武道館ライヴっていう一つのターニング・ポイントがDVDっていう一つの作品に現れたじゃない?で、そのいまだからこそ振り返ることが出来ることがあると思うのね。で、この先、次にライヴ盤を出すとなったら、10年くらいタイミングがないかもしれないし、そういうタイミングでライヴ盤を出さないと、企画盤っぽくなっちゃうじゃん。それはもったいないと思うんだよね。そう考えたら、LOVE PSYCHEDELICOの足跡を残すタイミングは今しかないかなって」(NAOKI) 2人が“彼ら”、“仲間”と呼ぶのは一昨年からライヴでその関係性を発展させてきたNEIL & IRAIZAの堀江博久(Key,G)、GREAT3のリズム隊である高桑圭(B)と白根賢一(Dr)、そしてanonymassの権藤知彦(Manupilator/Key/Horn)という4人。このメンバーと出会って、LOVE PSYCHEDELICOのライヴは劇的に変化した。そのことは先にリリースされたライヴDVD『LOVE PSYCHEDELICO IN CONCERT AT BUDOKAN』の映像でもお分かり頂けるかと思うのだが、映像のない、音のみの本作にあっても、スタジオ作品と決定的に異なる“何か”がパッケージされている。「みんなスーパー・テクニシャンってタイプのミュージシャンではないんだけど(笑)、大切なのはそういうことじゃないんだよね。みんな、ヘルプですって感じじゃなく、バンドだと思ってくれてるし。彼らと一緒にいると、リラックスして歌えるし、なにより楽しいの。そういう気持ちが大切なんだよね」(KUMI) デビュー時から彼らのライヴを観続けてきた者として言わせてもらうならば、現在のライヴ・メンバーと出会ったことで、LOVE PSYCHEDELICOのライヴは、温かみのある一つの有機的な場に変化したのだと思う。そこには彼ら2人+バックバンド4人=6という明確な解があるわけではなく、その2と4が溶け合い、そして混ざり合って、アウトプットが10にも100にも膨らみつつあった。その顕著な兆候が本作にあっては、無防備なまでに“開いた”KUMIの歌に現れている。高揚しているような、陶酔しているような、彼女のヴォーカルはバンドやオーディエンスを信頼し、何のためらいもなく心を開いた者にのみ許された熱く甘美な響きであると筆者は考える。「単純に俺たちの曲をコピーするとなったら、例えば、「O″」みたいな曲だと “はい、この曲は激しくやりましょう”ってなるだろうし、「Last Smile」は “ちょっとヒップホップのリズムを混ぜながら弾きましょう”ってなると思うんだけど、このバンドはそういう”お約束”がないの。「O″」も「Last Smile」もギア・チェンジの必要なく、同じ気持ちでやれるし、曲の本質を捉えてくれているから、極端に言うと、ミステイクがオッケー・テイクになり得るバンドっていうことだよね」(NAOKI) LOVE PSYCHEDELICOの作品は2人だけのスタジオ・ワークの比重が相当に高く、その作品世界はある意味でヴァーチャルな空間であるわけだが、そのヴァーチャルな空間に更なるリアリティを補強しているのが、LOVE PSYCHEDELICOの本質を理解し、ライヴにおいて、それを現在進行形で伝えるバンドである。その“LIVE MUSIC”、つまり “生きている音楽”を映像作品ではなく、音のみの作品に残すこと。その差異に関して、彼らは語る。「音だけでいかに聴くみんなのイマジネーションをかき立てるかっていうことにフォーカスするとなると、DVDとは作品のバランスが変わってくるんだよね。例えば、“KUMIの声が聴きたい”っていう瞬間があるとして、DVDだと、そこでKUMIの映像が映ると聴く方も無意識的にKUMIの声を探すんだよね。でも、アルバムは音だけだから、KUMIの声が聴きたい”っていう瞬間はKUMIの声が聞こえるようにしないといけないし、そういうライヴ・アルバムならではのこだわりはあちこちに散りばめられていて、ミックスは輪郭をはっきりさせて、デジタルなものはよりデジタルに、アナログなものはよりアナログにっていう、そういうメリハリのあるミックスにしたつもり」(NAOKI) ただし、作り手としては、大いにこだわりつつ、聴き手には気楽に楽しんで欲しいと、さらりと言ってのけるあたりが、実にLOVE PSYCHEDELICOらしくもある。「音楽の楽しみ方が変わってきて、なかなかライヴ盤と出会う機会がなくなってきてると思うんだけど、逆にもっと気楽に楽しんでみたらどうかなっていう。例えばね、ドライブの時に楽しめるライヴ・アルバムがあったっていいと思うんだ」(NAOKI) ただし、このアルバムが提供するのは気楽な楽しみだけではない。このアルバムでは2006年以降の彼らの方向性もそれこそ気楽に示唆されているのだ。そのちょっとしたヒントも聴き取って頂けたら幸いだ。「一昨年末から去年にかけて、アルバムのツアーや武道館ライヴ、それからアジア・ツアーがあったわけだけど、ここ1、2年のライヴっていうのは全部3rdアルバムのビッグ・バンから起こった活動じゃない? 多分ね、このライヴ・アルバムはその流れの最後だろうし、その先にようやく4枚目のアルバムが見え始めてきたんだよね。現に今年は沢山作品を録ろうと思ってるんだけど、今このバンドでやりたいなって考えているんだよね」(NAOKI)
TEXT:小野田雄